マンガ「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います」は正しくなろうだと思う

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賛否両論渦巻くマンガ「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います」に触れた。

これですねぇ…俺は好きだよ。

進研ゼミ勧誘マンガ顔負けの「わかりやすいサクセスストーリー」をストレスの少ない優しい世界の中で描いていく…という意味ではとてもいい作品だと思った。

「それ褒めてんの?」と言われそうだけど…小説家になろうの作品としては好きな落とし所だね。

その辺は後半にするとして、まずはあらすじから。

あらすじ

友達とオンラインゲームをスタートする事になったのだが…友達とやる前に一足先にやってみることにした主人公。

最初は魔法系のジョブにしようと思ったが…盾を使うとダメージがなくなることを知って、防御力だけを上げる「極振り」をすることに。

初期値を極振りしたことで、ダメージ無効になる。
そこから、攻撃面はスキルや装備でどうにかすることに決めた彼女の異色のプレーヤーとして噂になる。

最初はネットで「面白いやつがいる」と噂だっただけだけど…大量にスキルを習得し、装備も強化すると「歩く要塞」として話題になる。

オンラインゲームには希少な女子中学生で、ゲームスキルも低いのに…常人とは違うゲームの遊び方を見つけて無敵を極める彼女は、ネットで話題の人物になっていった。

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邪道に見える王道

Amazonのレビューを見ると
「主人公がチートすぎて、ゲームバランスが崩れてる」
とか、
「スキルが多すぎて極振りの意味がない」
とか色々書かれているけど…ぼくはこれこそゲームの醍醐味。

というのも、ゲームバランスが完璧に整ってる作品って意外と少ないのよ。
例えば、Shadowverseの世界大会の決勝ではほぼ同じデッキ同士がぶつかって、プレイヤー同士の度胸や判断が勝負を分ける…という名シーンがある。(Shadowverseは特にeスポーツとして、人気のデッキに偏りやすく、決勝大会でほぼ全員同じデッキを使ってることはザラ)
他にも、Shadowverseは3ヶ月に1回は新パックが出るカードゲームなんだが…カードが出るたびに「これじゃゲームバランスが崩れる」「アニメ化されたマナリアばっかり優遇しやがって」「運営はクソ」みたいな愚痴が飛び交ってる。

これ…他のゲームでもそうで、サーヴァント&スローンズというゲームで開催された大会では、決勝戦クラスの大会では「災厄の塔」を軸にする守りのデッキを使う人が続出。
サヴァスロの元ネタになってるクラッシュ・ロワイヤルというゲームでも、新カードが不定期で出るんだけど…これも、
「ラムライダーのせいで今までやってきたクラロワの環境が壊れる」
とプロ・ゲーマーが怒り出す動画が出るなど…ひんしゅくを買うカードは度々出てくる。(その割にクラロワはプロのデッキが偏らないんだけど)

何が言いたいかと言うと…eスポーツの現場だろうが、素人混じりのオンラインゲームだろうが、
「バランスを破壊するほど強いカード・設定を活かしたコンボ」
は存在するし、むしろ突き詰めるとそればっかり。

だから、極振りで描かれているゲームの話は一見「ゲームを知らない人が考えた邪道な物語」に見えるかもしれない。
しかし、ゲームの現場で起こってること。

流行のデッキにみんなが偏っていくこととか、流行の正反対の発想がみんなを驚かせて次の定番を作っていくことは、ゲームではよくある話。(上位ランカーこそ「ベタベタなデッキ」と「誰も使わないカードを使ってるのに、すごく強い」が両極端だから…)

それどころか、物語として飲み込みやすいように、
・進研ゼミの勧誘マンガのようなシンプルなサクセスストーリーに落とし込んだり
・(ラピュタや紅の豚など)初期のジブリ作品みたいに女の子には優しいムサイおっさん達が、女の子を優しく見守ったり
工夫がされている。

工夫のせいで「リアルじゃない」「登場人物に個性がない」といいたくなる気持ちはわかるんだけど…小説家になろうに出てくる作品は基本的にサクセスストーリー。それも、頭を空っぽにしてスマホでダラダラと読める作品が多いから…スマホでダラダラ読む読者にはこういうタイプの方が合う。

もっとディープでヘビーでボリューミーなものが読みたいというなら、ぼくは「若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇がいいし、社長も使い魔もかわいくて最高です」をおすすめしたい。

これは全方向にヘビーだから、人を選ぶんだけど…ぼくは大好きだよ。

ヘビーではあるけど、20代の男の子が成長するのに必要な要素…仕事での成功体験だったり、いい上司や先輩だったり、恋だったり…そういうものを1つ1つ読みやすいサクセスストーリーに落とし込んで描いているからぼくは…好きだよ。

小説家になろうの作品って、主人公がウザいから作品が面白くないの!!

ぼくね…逆に「努力してない主人公」にあんまり感情移入できないからなろう嫌いなんだけどさ…。

好きな少年マンガがNARUTO・刃牙・鋼の錬金術師という親との関係がこじれてて、努力して周囲から認められないととてもじゃないけどやっていけない人達の話ばっかりだから…なろう的な作品見ると「こんな人間生きていけるはずがない」と言って、ツバかけて踏みにじりたくなる。

そういう意味では、主人公にできる努力・できない努力・才能を自覚して次の敵に立ち向かう「黒魔法離れ」は少年マンガっぽくて好き。
「極振り」も熱血で努力な感じはないけど、人がやってないことを自分で考えながら突き詰めていくゲームの醍醐味・努力する面白さが描かれて好き。

でも…嫌いななろう作品って、
・「神様からチートをもらって、ドラえもん顔負けに何でもできる人物になる」って話だったり、
・アニメ1話の2分ぐらいから「異世界転生したぞー!いでよ俺の能力」とか叫びだすやつとか、
・スマホで調べた異世界の知識で、王様になって領土を広げる
とかなんとか。

…いやさ、こういうの好きな人もいるだろうよ?
でもさ、そんなに簡単じゃないこと、簡単だったらそれもそれでつまんない&みんなそのぐらいのことはしてるから次の努力をしてることぐらいみんなわかってんじゃん。

現実だってそうでしょ!?
成功したとか努力したとかそういう問題じゃなくて、広い世界を知らないでイキってる中学生・高校生…いや、何よりも大学生なんてムカつくじゃん??

お金稼ぐこと、生活費をやりくりする大変さも知らないで
「俺はたくさん勉強したんだから」
「時代は変わったんだ。あなた達は古い」
みたいにイキってる大学生、鬱陶しいじゃん

ぼくはこの言葉嫌いなんだけど…「意識高い系」っていう人もいるぐらいには鬱陶しいことが有名。
…まあ、意識が高いんじゃなくて、仮想敵が低すぎるだけ
ぼくも経済のニュースとか見て「学部生なら誰でも勉強してること」「政治ニュース追いかけている人なら一週間も追えば矛盾に気づく」という報道を見て、「こんな世の中がバカなら、大学で経済勉強した俺ってすげーんじゃねーの?」とか思ってたけど…まあ、アホな人に合わせている情報に自分が低レベルな闘いを挑んでるだけ。
自分ががんばってやっとできることを見つけたり、自分より強い敵と真剣にぶつかれば謙虚または素直になるしかないから…それがキチッとできてないだけ。

 

…その点を素直でものを知らない自覚がある女学生がゲームを学んだり、すっかり就活で自己肯定感を失って謙虚さを取り戻した新社会人にして、そういう人がサクセスして周囲から応援されながら成長していく話になってる…という形で読みやすさと口当たりのよさを担保してるこの作品は好きだね。

主人公が大人だからイキってる部分が少ないし、仲間思いな話が多くてアットホームで読みやすくて面白い…という意味では、「(なろうでもなんでもないけど、)小林さんちのメイドラゴン」「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」あたりがいいよ。
「黒魔法」と同じ作者が手がける「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」もいいよ。

…デスマーチとスライム300年はチート要素あるけど、軸足を子育てやスローライフにシフトすることで「イキリ」による鬱陶しさを最小限に留めつつ、自分の目標をがんばってる作品だからチート設定にストレスを感じないで楽しめるよ。

 

とにかく、ぼくはなろう系の中でも、努力しないでチートを与えられて暴走する作風は、正直好きじゃない。
ぼくの趣味というよりも、滑ってる人がやるととことんバカにされる作風だから、これをなろうらしさだと履き違えてる人が多くてほんと困る。

一方で、主人公を落ち着いた人間にすること、苦にならない努力(ゲームや恋の中で好奇心で突き進んでいくタイプ)の作品は読んでいてあっさりしていて読みやすい上で納得しやすいから、なろうにはそういう作品が増えたらいいな…と思う。

玉石混交ななろうの世界で、1つの軸を提示してくれている作品としてとても良かったのでこの作品を紹介することにしました。
お手にとってもらえると嬉しく思います。

あとはゲームの世界じゃないのに、ゲームっぽいスラングを連発する人が異世界の住人として登場する作品が苦手なんだけど…これはまた今度。
その点、最初から「ゲームの世界です」と断ってるデスマーチや、極振りは私好きだよ。

◆関連記事:なろう原作のおすすめ作品

マンガ「若者の黒魔法離れ〜」は、なろう小説の漫画版としては最高傑作かもしれない
本文で紹介した作品。是非どうぞ。

マンガ「くまクマ熊ベアー」は強ければ強いほどギャグっぽくて面白い
これもオンラインゲームを主題にしたなろう小説を原作としたマンガ。むしろ、マンガになることで、ビジュアルの面白さが生きてて面白いです。

マンガ「薬屋のひとりごと」はなろう小説が原作とは思えない強度の良作
2つの出版社でマンガ化されたなろう発の中華ファンタジー。海外ドラマみたいな観察力を軸にした話と、オタク女特有のキラキラしてないジトッとしたキャラクターが面白いです。

 

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青二才は振り向かない
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