【ネタバレ感想】映画クレしん「新婚ハリケーン〜失われたひろし」のコレジャナイ感は異常!

2019年のクレしん映画の新作を見てきた。
記事のタイトルにもあるように「コレジャナイ」って言うのがぼくの感想。

面白い・つまんないで言えば、
クレしんでやらなかったら面白いけど、クレしんでやったからつまんなくなった
というのが素直な感想。

これはクレヨンしんちゃん初心者はそこまで気にならないと思う。
ただ、クレしんの劇場版をすべて見ているぐらいのファンは…逆にしんどい。

あらすじ

野原一家は新婚旅行でオーストラリアに行くことになる。

金環日食を見たり、ラブラブな写真を取る予定だった。
しかし、子連れで、結婚生活を酸いも甘いも噛み分けた野原夫妻は新婚旅行を新婚のようには楽しめず、子ども世話に追われたり、夫婦喧嘩をしたりしてしまう。

ようやく仲直りのきっかけをつかんだと思ったら、原住民にひろしが拉致されてしまう。
ひろしを追いかけるうちに、ひろしは原住民の「姫」に「花婿」として捧げられるために拉致されたことがわかり、原住民の後をつけていくことになる。

 

今作の主人公はまさかのみさえ!!

「コレジャナイ」というタイトルにしているけど…クオリティ自体は高い!中には
「ここ数年の中で一番好き」
という人もいるほど、失われたひろしが好きな人もいるほど。

その理由は、クレしん映画としては珍しくみさえがメインの物語でかつ、「子連れの新婚旅行」ということで、「幼児・乳児がいる母親の本音を代弁しつつ、夫と長い間連れそう妻の言葉を代弁しているから」という部分が大きいと思う。

実際、そっち方面ではすごく優秀な作品で…作中に出てくる浮かれた新婚や、お宝を狙う女トレジャーハンターと違って、地に足ついた女性(夫婦)としてみさえもひろしも描かれている。

これ自体は共感度が高い上に、クレヨンしんちゃんの家庭環境をうまく活かした映画作りができてると思う。

だから、クレヨンしんちゃんの過去の作品にそんなに思い入れがない人や、子どもが見たいというから仕方なく見に来た母親・父親には共感度が高い作品

これはクレヨンしんちゃんの映画を見て育った人達が30歳・40歳になっているから、彼らに刺さるような映画でもあるんじゃないかな…。
クレヨンしんちゃんを見たいわけじゃなくて、今のライフスタイルで思ってること感じてることを映画にしてほしいと思っている場合はね。

 

面白いけど、これはクレしんではない。ぼくはクレしんが見たいんだ!

ただ…子育ての大変さとか、子ども子どもうるさい親というのは…別にクレヨンしんちゃんで紹介しなくてもいい分野なんだよ。

ネットメディアでもTwitterでも探せばいくらでも出てきそうな子育て体験談みたいなモノを、クレしんを通じて見たいとは全く思わない。
なんなら、子育て体験談とか、子育ての苦労とか家事が大変とか…もうネット上では食あたりするほど上がっているのを呼んでいるから、クレしん映画に持ち込んでほしくないわけ。

そもそも、いまさら語らなくても伝わることじゃん。
しんのすけ自体が遅刻の常習犯で、手のかかるわんぱくな子どもで、ひまわりは乳児。
テレビ版でも、映画版でも子どもに手を焼いている母親の姿なんていっぱい出てくるんだから、それを今更持ち出すのって、
「あーバカのために、苦労を口で説明する作品になっちゃったんだなぁ〜」
って気持ちがして、正直言って不愉快。

トレジャーハンターの人がみさえのカバンを重たくて
「何入ってるのよ!?」
とかいい出すシーンで、
「ひまわりのおむつや、ぐずった時のおもちゃ、それに着替え…」
とかなんとか言わなくても、キチッとテレビや映画を見てきた人はもうわかってるのに、なんでそんな野暮ったいシーンを出すかな?

他にもトレジャーハンターの人に
「1年間準備してきたけど、もう絶対ムリだ」
と言ってるのに対して、
「たった1年!?私達はもっと何年も、そしてこれからも家族なんだ」
とか言い出すシーンあるんだけど…なんでそれを振りかざす形にしちゃうかな…。

 

野原ひろしが、
「毎日、満員電車に揺られて、外回りして、上司に文句を言われ、部下とは話が噛み合わず、結果が出ないと養っていけないのに仕事が忙しいことを妻や子どもには【付き合いが悪い】と文句を言われ、それでも俺は頑張ってんだ」
みたいなことを銀幕でグズグズ言い出したら…それこそ興ざめでしょ!?

日本中のお母さんががんばってるのはわかる。
だけど、露骨に言い出すのは本当に察しが悪い人や話し合わないといけない相手への最終手段。
言えば言うほど恩着せがましいとか、お互いの大変自慢になるとか…誰も幸せにならない喧嘩が始まるだけだから。

ネットの子育て大変おばさんにも、この映画にも言いたいことは
いちいち振りかざすな!実態や工夫を細かく語ってくれるなら嬉しいけど、いちいち【辛いのは私だけ】みたいな顔して語るな!みんなそれぞれに大変で、お前もその一人に過ぎないんだ!!苦労をわかってほしかったら他人の苦労もわかってあげろよ!話はそれからじゃボケ!!」
ってだけ。

苦労をねぎらってもらえるのは苦労を自慢する人じゃないんだよ。
・苦労してすごいものを作ってる人か
・誰もしないような苦労に足を踏み入れた人か
・大変なことを毎日淡々と続けている人か
・他人の痛みがわかってあげられる人か
そのどれかだよ。

振りかざす人ではない。
むしろ、振りかざすのは自信がない人かいっぱいいっぱいな人。

クレヨンしんちゃんで5歳児が主人公な理由

クレヨンしんちゃんって、しんのすけやひまわりがハチャメチャであればあるほど、みさえやひろしが子育てに手を焼くことで子育ての苦労を間接的に表現する作品だったはず
しんのすけが寝坊したら支度を手伝わないといけない、遅刻をしたら幼稚園まで送っていかないといけない、ひまわりの面倒を見てる時に拗ねるしんのすけを誰かがフォローしないといけない…とか。

これはひろしやみさえに「やれやれ」というしんのすけも同じ。
特に劇場版では、しんのすけが大人に「やれやれ」「父ちゃん母ちゃんをお助けするぞ」と言って動き出すことも多いけど、これもこれで家族が助け合いであることをいちいちストレートに言わなくても考えてもらえるような構造になってる。

「クレヨンしんちゃん」がクレヨンしんちゃんである理由は、しんちゃんがわんぱくであればあるほど親は苦労し、しんちゃんが5歳で大人のことがわかんないほど大人にやれやれと感じる。
その隔たりがあっても、お互い助け合って一緒に生きていくのが家族…っていうのを説教臭く描かなくても、作品の中で説明できる描写が多く出てくる。

だからこそ、Twitterにいくらでも書いてあるような子育て大変自慢・夫婦大変自慢で映画作って欲しくなかった。

これが1つ目の理由。

クレしん映画ってそもそもガイナックス作品に近いんだよ…。

もう1つ、この映画が「クレしんでやることじゃないでしょ」って感じている理由がある。

それは、クレしんの映画ってガイナックス作品に近いスタンスだということ。
ガイナックス知らない人は「エヴァンゲリオン作った会社」と言えば、少しはわかってもらえるかな?

ガイナとクレしん映画共通点としては、
・特撮ネタが大好き(クレしんの6代目のオープニング曲「とべとべおねいさん」は、勇者ライディーンが元ネタ。ライディーンのメロディーでとべとべおねいさん歌っても成立するぐらい似てる。事実上の替え歌状態。)
・怪獣ネタも大好き(劇中でゴジラのBGMを使ったり、巨大ロボットネタが出てくる作品あり)
・オマージュ大好き(映画の題材に因んだオマージュを徹底的に盛り込むのが好きな文化はガイナックスもクレしん映画も共通。)
・映画の中にエヴァンゲリオン風のロボットが出てきたことがある。
・天元突破グレンラガンを手がけた中島かずきは、ロボとーちゃんの脚本でもある。
・ガイナックスのオリジナル作品は少年が主人公の作品多く、少年の目線や立場から見て大人を描こうとする作風がクレしんよく似てる。(例えば、碇シンジが主人公のエヴァだが…おとなになると碇ゲンドウの立場でエヴァを見てしまう。最初は突然呼び出されてエヴァに乗せられるシンジくんに同情してしまうが、大人になってからエヴァを見ると「仕事だし、無茶を言ってるのもわかってる以上、ああいう嫌われ役に回るしかないよね。大人って大変だよね」という気持ちでエヴァを見ることになる
という感じ。

つまり…クレしん映画って元々はすごーく男臭い・オタク臭い作品だったわけ。

これは、題材としても、ファン層としても、大人の苦労を描く手法も全部男臭くオタク臭い方法だった。

だからこそ、夫婦の苦労自慢みたいになってる今回の作品って、90年代からクレヨンしんちゃん見てきた人からすると、クレヨンしんちゃんに期待していたものと違うどころか、むしろ暴力的なぐらい違うわけ。

クレヨンしんちゃん自体は、一緒に見に来たお母さんに喜んでもらえるように下ネタを減らした作品や、みさえの扱いを良くした作品、親が親っぽい説教をする作品がここ15年ぐらい増えてる。

違う違う!!
俺はこういうのを期待してるんだよ。

これを、クレしんでアレンジすると…こうなる!!

完全に一致ですよ!!

元々下ネタと、オマージュで成り立ってるクレヨンしんちゃんなんだから、いい話とか、オトナの苦労とか…そういうのは「察する程度」でいいの!!

おバカでいいのよ…本気のおバカをやらかしてるところが見たいんだよ…。
だから、どんだけいい話でも、敵キャラが弱すぎて何もハラハラしない、しんちゃんが輝くシーンが少ない、語ってないけど読み取れるシーンが少ないクレしんって物足りないの!!

ライト層は大満足かもしれないけど、逆に読み取れるものがなさすぎるクレしんは俺には辛い。

もっとめんどくさいのを来年はお願いします。
読み取って徹底解説したくなるようなやつを本当にお願いします。

 

 

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