地下アイドルにハマってた人が、ストリップにハマりだしてこんな事を言いだした。
「やっぱり、伝承のある業界は強い。ファンも演者も運営陣もそれぞれのプロだから、安心してみることができる。各方面のいざこざが少なくて見やすい」
とおっしゃってた。
なぜアイドル業界はトラブルが多いのか??
アイドルに詳しくないぼくは「地下じゃないアイドル」ばかり見てるせいで考えたこともなかったけど、バーチャルYouTuberに関する事件が報じられたり、アイドル活動の末に自殺した女の子の話とか聞く。
だから、「アイドルって言うのが女の子揃えて馬車馬のように働けば成り立つ」と思っているおバカな運営者は一定数いらっしゃるだろう。(そして、女の子を馬車馬のように働かせるのは、女の子本人は法律や契約について詳しくないから簡単。)
これはある程度、的を射ている。
ライブの都度ライブハウス借りて、衣装1セット、女の子3人以上が入ればアイドルは始められる。
もの(ハードウェア)がいるビジネスの中では、トップクラスに敷居が低い分野と言えるだろう。
トッププレイヤーが合流すると、アイドルは驚くほど売れる!!
しかしながら…アイドルとして成功する人は、基本プロデューサー、仕掛け人に当たる人達がトッププレイヤーを経験した人ばかり。
おニャン子クラブやAKB48で成功した秋元康は作曲家としてすごく有名な人。
モー娘。で成功したつんくは元々シャ乱Qというバンドで自分自身成功してる。
ももクロもメジャーデビュー曲はヒャダインこと前山田健一で、この人も自信でネットで人気になったりももクロ以外にも数々の楽曲提供を手がけてる。
Perfumeはアイドルかどうかで議論が分かれるところだけど…長い下積みから抜け出す大きなきっかけには中田ヤスタカを音楽プロデューサーとして迎え入れたことがある。ちなみに、1読モだったきゃりーぱみゅぱみゅをアーティストに仕立て上げたのも中田ヤスタカ。
プロ野球では名選手が監督をするのが当たり前過ぎて「名監督≠名選手」と言われているが、アイドルの場合はむしろ作曲や音楽作りで有能な人が加わると人気が加速度的に伸びるきっかけになっていく。
アイドルが強くなれる部分は歌や踊りのスキルと、ファンに接する人格。しかし、それだけでは売れない。
それをサウンドやプロとして必要なことを補強する音楽のプロや、ファンを暴徒化させないために管理する事務所の力が不可欠となる。(AKB48グループは膨張した結果、ファンの暴徒化を許してしまうスタッフが出てくるようになってしまったけど…あそこまで人数や組織を拡張してしまうと…しょうがない。)
大事なのはスタートが地下だろうが、インディーズだろうが、大きく伸びるきっかけにはプロのノウハウが加わることが関係していること。
「かわいい女の子が歌って踊れば人気が出る」
なんてそんな生やさしいジャンルじゃないことは、事例を調べれば自ずとわかってくる。
地下アイドルやご当地アイドルぐらいならいいサウンドクリエイターがつきにくい分全国区にならないし、大きく売れないからスタッフの練度が低くても回るかもしれない。
しかし全国区に人気、国民的なアイドルと呼ばれる人はどっかで優秀な作詞家・サウンドクリエイターとの運命的な出会いを経験して、なおかつファンの中のルールや文化を浸透させる人達が不可欠となってくる。
国民的なアイドルまで行った人達はだいたいその法則の中で動いている。
しかし、AKB48はその中でもかなり特殊。
Perfumeやももクロが長い下積みをするなかで、AKB48が「最初からクライマックス」と言わんばかりの大躍進を遂げた理由…これは、秋元康が最初から「強くてニューゲーム」という状態で参戦してるから、スタートダッシュがすごかった。
第一線のプロが1から関わる事例はそれだけレアケースだから、秋元康ぐらいの人が最初から関われば、そりゃ「強くてニューゲーム」だろう。
同時に、秋元康や秋元の一声で動かせるプロ達だけでは管理しきれないほど膨張したため、アイドルの歴史の中で最も売れたアイドルでありつつ、闇が深いアイドルという不名誉な位置づけにもなっている。
女性を売り出したい時には偶像化と分業化が一番いい!!
そして、この法則はネットでも…いや、むしろネットのほうが顕著。ゆっくり鋼兵という人が
「女性の歌い手が成功するためには歌以外の全てを他の人間に頼れ!」
というアドバイスをしている。
鋼兵さん曰く
「男の歌い手で人気を出したい人は自己顕示欲の塊だからガツガツ色んな事する人が多いけど、女の歌い手はメンヘラ的な人が多いから、mixからセルフマーケティングまで勉強するようにいったら、メンタルが壊れる」
とのこと。
…これ、ぼくのいるブログの世界でも同じことが言えて、女性の書き手はぱっくり分かれる。
マーケティングやクライアントとすり合わせたライティングがうまいビジネスマン的な人と、逆にいいものを書くけどウェブデザインや広告についてはズブの素人な人。
男で人気の人のほとんどはどっかでウェブデザイン・マーケティング・アフィリエイトを勉強したり、一度はクライアントとすり合わせながらのライティングに挑戦する。
職人肌な男性ブロガーはだいたい伸びないか、ブログではなく匿名になって個を売り出そうとかしない。
女性の場合はブログを解説して自分を出す人は多いから平均的な文章力またはブランディング力のどちらかは高い。
しかしながら、趣味のブログであることを前提としてるか、結果ありきの企業チームであることを前提としているため、一人で何でもできる・挑戦するブロガーは育ちにくい。
アイドルの場合も10代の女の子や、見た目が評価されることからスタートする分だけ、
「お勉強をして全部自分でやれ」
と言っても、それが苦手な人は多く、良くも悪くも周囲の大人のちからが直接反映されやすい。
ストリップの場合はその辺特殊。
地下アイドルやセクシー女優を経験してから踊り子に転身する人が多いため、アイドルとして手慣れていたり、色んな苦労をなされている分だけ自分の売り出し方まで考え抜かれている人が多い。
また、早い段階から同じジャンルのベテランとも顔を合わせやすいから、伝統や技能が伝承されやすい。
アイドルの場合は、大所帯だったり、先輩に同じようなアーティストがいないことが多いから、外付けのクリエイターに依存する部分が多い。
…これを聞いて思ったことがある。
「お笑いの吉本にせよ、プロ野球にせよ、マンガにせよ長く続く芸事の組織は伝承がしっかりしているよなぁ…。」
新しいことが創造的とは限らない。
お笑いの吉本興業はすごく縦社会な世界。
番組の中でも先輩後輩が如実に出るし、先輩芸人は後輩芸人に奢るという暗黙のルールもある。
水曜日のダウンタウンでは、ノンスタ井上が先輩芸人としてご飯を奢るかどうかという検証を試みたこともあり、結果的に26万円分も後輩におごっている。
さらには吉本自体の育成や売り出し方も強固。
放送作家との打ち合わせに合格しないと舞台に立てなかったり、舞台向けの人、営業向けの人、テレビ向けの人とそれぞれに売り出し方があったりする。
島田紳助のように既存の漫才を壊した人が売れるように見える半面、紳助が既存の漫才を壊せたのは吉本の諸先輩を研究できる環境があったからだ。
そして、紳助がキレイに身を引くことができたのも、紳助の漫才を早い段階で「このやり方では長く続かないからちゃんとやれ」と指摘してくれた師匠がいたからだという。(紳助は「通用しなくなったらやめるから、続けさせてくれ」といい実際その言葉を実践した)
プロ野球もこの辺が徹底してて、グラゼニによると先輩が後輩に奢るルールはある。
さらに、選手が補強できるルールはあるものの、ほとんどのチームは補強よりも育成がしっかりしていることを重視するし、重視しないと勝ち抜けない構造になっている。
このルールから、即戦力を補強する一方で、衰えていても後輩の手本になる先輩選手を獲得する流れがある。
先輩選手の獲得に熱心な球団としては日ハムがあるだろう。巨人の二番手捕手の實松や、勝てなくなった金子千尋など第一線の選手としては疑問符がつく選手でもすごい経験値を持った選手は貪欲に獲得してる。
マンガはその辺が「昔はあった」という感じ。
もちろん、新人賞やネットで売れた人を迎え入れるから「アシスタントでの下積みは必要ですか?」と言われがち。
出版社自体も、「売れてなんぼ」の風潮が強すぎて、見城徹や箕輪編集室みたいに売れたら(炎上しようが過激発言しようが)ヒーローという風潮もある。
しかしながら、週刊誌やマンガが強くなったのは、アシスタントでの下積みを経ることで、マンガを作り続ける体力や手法を学ぶことにもあったため、「売れればいい」「別ジャンルで売れた人を取ればうまくいく」とも言い切れない暗黙知が漫画の世界にもある。
アメリカの企業では「新しい風を吹かせたい」ということで、担当者を変えても「引き継ぎ」をしない会社もあるらしい。
ビジネスのジャンルによっては正しいところもあるかもしれない。
しかし、日本の芸事で長く続いているジャンル、時間をかけてその業界のトップに躍り出るようなところは縦社会をうまく活用した引き継ぎや伝承、ノウハウを持っている人と若い子が持っているパワーを上手く融合させることに成功している。
若くてかわいい女の子はそれだけで強い。
しかし、その強さにすがるだけの人では売れない。
いい経験をさせたり、弱点を補う人の存在は不可欠だ。
最近、40代の希望退職者を募る会社や、終身雇用を否定する大企業が多く報じられる。
確かに、単体で見ると採算性が見合ってないのかもしれない。
しかし、大きな組織のメリットは、手本や分析の参考になるいい先輩や、若さをうまく発揮させてくれるプロデューサーや上司の存在も大きい。
大企業が、何も知らない新卒から搾り取るダメの存在…それこそ、ダメなアイドル事務所やバーチャルYouTuber事務所、補強に頼るばかりで生え抜き選手が育たないプロ野球チームのようにならないことを祈るばかりだ。
AKB48自体の戦略がすごいというよりもむしろ、「強くてニューゲーム」に最初からアイドルと二人三脚を組んだことが一番の成功理由だと思うんだよなぁ…。
先行投資って損する可能性もあることだから、それを最初から積極的にやること自体がすごい。誰にでもできることじゃない。