マンガ「異世界おじさん」はとにかく残念なおじさんのお話です

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このマンガを喫茶店で読んだのは本当に間違いだった。

1話に1つ以上は声を出して笑えるシーンがあるから、喫茶店の中でケラケラ笑いこけてしまって【なんだろう、この人?】という感じになってしまった。

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「とにかく面白いギャグマンガ」というだけではない。
ストーリーも、アイデアも、ギャグも、作中設定も全部が洗練されているからこそ笑える。

例えば、作者は絵がうまくてかわいい女の子もきちっと描ける。
だけど、主人公やギャグシーンは笑いを優先して崩した描き方をしてくる。

例えば、「異世界おじさん」というタイトルからして定番とは違う路線を行く作品であることがわかる。
しかしながら、定番とは一線を画するために、「異世界転生」の定番をキチッと研究した後を、節々に見ることができる。

ただ笑えるだけじゃなくて笑いになる要素にしっかりとした裏付けがある。
だから、笑えるのに引きつけられる魅力、ネタが分かってても笑ってしまう強さがあって楽しめた。

あらすじ

17年前に昏睡したおじさんのもとを訪れる。

すると、おじさんは、自分が「異世界に行ってた」といい出す。

この流れ、一見すると「こいつ頭おかしいんじゃないの?」と思われるかもしれない。
しかしながら、フィクションのジャンルとしての「異世界転生モノ」では、「トラックに跳ねられて、神様に出会って、異世界で別の人生を送る」という定番の流れがある。

その流れを知っている人ならば、
「あ、異世界転生モノだ。それも、定番の流れをわずか6ページで片付けて、異世界転生モノというジャンルの先を描こうとしているすごい作品だ
というのがわかる。

「作品でやりたいこと・期待してほしい位置づけをすばやくキチッと示す」
これをわずか6ページでやったことが、異世界おじさんのすごいところだ。

さらに、「2000年〜2017年の間に昏睡していた」というのがミソ。
異世界おじさんは日本人であるものの、2000年ごろまでの常識で話すため、異世界転生というジャンルで定番になっている流れも知らないし、今現在の技術や昏睡している間に起こったことも知らない。

その証拠に、今の人には珍しくセガのゲームに強い執着を示している。

これがギャグではなく、本気で言ってるから、このおじさんは恐ろしい。

他にも、携帯電話のイメージが全く違う。
今の子がツーカーやボーダフォン…おそらくはウィルコムすら忘れてしまったように、この人はスマホをよく知らない。

逆に「文豪ミニ」という言葉のほうが聞きになれないだろう。
何しろ、1980年代〜90年代半ばに存在したワープロの専用機のことなのだから…今の子が知ってるわけがない。

こういうネタを細かく仕込んでくるから、この作品はすごい。

ジェネレーションギャップネタと、異世界転生モノの定番をうまく混ぜたネタとしてはこういうのもある。

異世界モノに限らず、アニメやマンガでは定番になっている「ツンデレ」な女の子…「ツンデレ」という概念がわからなかったおじさんは「口の悪い女に付きまとわれている」としか思えず、まさか自分が好かれてるとは思えなかったのだという。

定番の流れを知っている人は、オタクな作品で当たり前のことが裏切られる面白さがすごい!!
一方で、オタク的な予備知識がなくても、「ジェネレーションギャップがあって、女心にびっくりするほど鈍いことで幸せになれない残念なおじさん」というシュールなキャラクターを楽しめる。

加えて、設定に込められているネタがとても緻密だからこその面白さがある。

コテコテのオタク向けなのに、海外ドラマのような魅力もある。

異世界おじさんを語る上で、抑えておきたいポイントは「異世界おじさんは悪い人ではないけど、恋愛や現代のことについてはびっくりするほどバカ」という点です。

びっくりするほどバカな人を読者にストレスかけずに描ける作品は少ない。
いや、そもそもバカな人をキチッと描ける作品自体が日本だとものすごく少ない

一方で、オタクがあまり見ないような海外ドラマではあまりにも頭が悪すぎてストーリーを引っかき回すキャラがちょくちょく出てくる。
例えば、プリズン・ブレイクという刑務所からの脱獄を描いたドラマでは、刑務所だけあって、短気で暴力的なチンピラや、やたらと人種に対する意識が強い不良…さらには自分のことしか考えてない小悪党など、癖があるキャラクターがたくさん出てくる。

そんな不良達と協力しないと脱獄できないため、建築士でインテリな主人公スコフィールドは仲間を作っても計画を狂わされたり、小競り合いに巻き込まれる。

プリズン・ブレイクはバカを描くのも、頭がいい人を描くのもうまい。
しかも、バカだから魅力がないわけではない。
バカだけど仲間思いだったり、小悪党だけどお母さん思いで母親のことは大事にしていたり、道徳的にはクズだけどもプライドや知恵があってどこまでも主人公に食らいつくしぶとさを持ち合わせている人もいたり。

色んな形のバカやクズを、魅力とセットで描いている。

異世界おじさんには、プリズン・ブレイクで描かれているような「バカだからこそ、話をかき回す」「バカなりにすごく真剣に好きなものがあって、入れ込んでいるからこそ言葉に重みがある」というエピソードをうまく混ぜ込んで、バカバカしいギャグのような味わいと、どこか憎めない魅力的な部分を織り交ぜられている

そして、それはおじさんだけでなく、親戚の男の子にもうまく落とし込まれているため、笑えるポイントが色んな所に散りばめられていて面白い。

オタクの作品でこれがきちっとできてる作品は稀有。
それだけに、オタク向けの作品に違う手法を落とし込んできたことに、すごく満足を感じてる。

それもマンガのイラストの力をうまく使って面白くしてるから、ぜひマンガで見てほしい。

残念をウリにした作品は色々あるけど、それらとは桁が違う残念をストレスなく楽しめて、それでいてストーリーや設定は洗練されていて、おじさんにも愛着が湧くというすごい魅力を持った作品だから。

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Amazonで170という大量のレビューがついてる人気作品です。
局地的にはすごく人気がある作品だから、きっと近い内に映像化されると思います。

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青二才は振り向かない
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