「時間管理について書いた本は数多あれど、この人よりも時間管理について語ると説得力がある人はこの世にいないだろう」
という人の本を読んだ。
週刊連載のこち亀を40年間休まずに続けた秋本治さん。
こち亀を200巻出すだけでもすごいことだが、それを休みなく加えてこち亀連載以外の仕事もやってのけるこの人ほど時間管理を語って説得力のある人はいない!
マンガを読む人や、創作や物書きをやる人なら
「休まない(休載がない)」
「常にストックがある」
「徹夜もない(9−19時を定時とし、残業はしても徹夜はしない)」
「しかも、連載しているマンガは200巻まで出して、アニメ化もドラマ化もされる」
「スケジュール管理を会社単位で実現させ、担当編集まで時間に気を使わせるほど巻き込む」
この辺のことを聞いたら、人間業じゃないということがわかるだろう。
そりゃ、マンガの神様は手塚治虫かもしれないし、総発行部数はワンピースの尾田栄一郎の方が上だよ?
でも、ある程度キチッとヒットさせた上で続けるということについては続けるということについては秋本治の右に出る人はいない。(総発行部数だって、歴代5位なので決して低くない)
そういう人から学んだ結果…ぼくもすごく成果が出たから書いていたことの中で「いいなぁ〜」と思ったことを実際にやってみた体験を交えて書いていく。
どうしてもやりたいことを見つけてモチベーションにする
そもそも秋本治さんが休みを作りたかった理由は
・純粋に休みたい(常にギリギリでは続かない)
・こち亀だけでなく、読み切りマンガも書きたい
という理由があったそうだ。
自分の場合は、動画作りと旅・イベント系の記事や動画も作りたいと思ったこと。
最近、動画も作り始めただが…動画を作るとブログを書く時間にしわ寄せが行ってブログが書けなくなってブログの収入やアクセス数に多大な悪影響を及ぼした。
その後無理を重ねられる体作りとブログの遅れを取り戻そうとしたら、今度は病気とケガに苦しめられてなんにもできなくなって半月動けなくなった。
いよいよカツカツになって困っていたため、「秋本治の仕事術」を読んで時間管理のあり方から変えることにした。
細かいことは後で書くが、本を参考にしてブログを書く時間を強制的に削った。
すると不思議なもので…「今日は何をしないといけない」「今どれだけ余裕がある」といった進捗の把握を意識的にやるようになって、家もきれいになり、ブログの更新も早くなった。
しかも、状況が改善してもまだ満足せず、「このぐらい貯金を作らないと旅に出かけられないし、動画も作れない!」と貯金を作ろうとさらなるスケジュール管理の改良に邁進する自分がいる。
具体的に言うと、旅に出ても弊害が出ないためには、最低でも4日の貯金がほしい。
旅に1日、動画制作に2日、休みに1日…これらを全部整えないと続けていけない。
だから、できるだけ4日分の貯金を作れるようになれるよう今はがんばっている。
秋本治さんの場合も、やりたい仕事のための逆算をして必要な休みを計算したそうだ。
読み切りを出すために1回45ページ…それも読み切りを出す年末年始は印刷所の関係で締切も早い。
「やりたい仕事をモチベーションに」なんて忙しい人からしたら逆説的に思えるし、ライフハックを読み慣れている人ならありふれているかもしれない。
しかし、自分で作りたい休みを計算しないと、そもそもモチベーションが続かないのだ。
これをお金にしたものがクラウドファンディング。一見「他人のカネで自分がしたいことをやる不埒な行為」と思うかもしれないけど…実際は自分がやりたいことを細かく予算・工程・成果物・他人への見返りまで説明できるまで煮詰めて発表するのは大変なことだ。
「求めよさらば与えられん」
という言葉があるけど、これはかなり本当。
開けたい時間と理由、ほしいお金と使い道…それらを自分で計算で決めないことには何も始まらない。
仕事のできる時間を短く設定してしまうと自ずとスピードは早くなる
秋本治さんも最初から規則正しい働き方をしていたわけではなく、結婚などの節目を経験する度に時間を短くしてこうなっていったのだという。
元々は夜の2時まで仕事していたものを、じわじわと縮めていって、最終的には19時を定時にして(間の食事休憩2回を引いて)8時間労働を基本とする体制を確立したそうだ。
半信半疑なだったが、闇雲に書いたり書かなかったりだったものを「8時間労働週休2日制」という公務員みたいな目標を掲げて一週間を管理したところ…本当に回った。
手帳に、毎日の作業進捗の貯金を書いたり、何も浮かばない時には「今日はもう休み!週2回休めるんだからもう今日は書かない」と言って調整しだしたら…ほぼ毎日書けるようになった。
休みの日もダラダラ休むのではなく「5日間動くとなれば、家のことはこれだけやっておかないといけないから…」と計算し始めて…結局は体調を崩して家が荒れていたのに、わずか2日で元よりよくなった。
秋本治さんはプロだから7時半起床、9時起床が板についている。
ぼくは躁うつ病の持病や発達障害があるからゆるく「フレックスタイムの8時間労働週休2日制」と言って目標にしたが…これをやり始めてから1日をしっかり計算するようになった。
ちなみに、秋本治さんに匹敵する時間管理のプロとして山田昭男という経営者がいる。
この人は「日本一幸せな会社」を掲げ、日本一休みが多く残業もない会社を作っているが、この人も「仕事できる時間を短くしても色々考えて短くても対応できるようになっていく」と同じようなことを著書や朝日新聞のインタビューで答えている。
興味がある人は是非読んでほしい。
徹夜しても時間がずれるだけ。睡眠はしっかり取るべし
秋本治さんは徹夜について「時間がずれているだけ」とバッサリ切っている。
これも実際やってみるとわかることなのだが…無理をして徹夜するよりも、朝から「8時間労働」と決めて夜はちゃんと寝ると結局は朝に起きることができる。
別に10時間でもリズムが保てる人は10時間でもいいだろうけど…とにかく定時を決めないと、人間の生活はどんどんずれていく。
マンガ家ぐらいなら昼まで寝ててもマンガさえ上がれば仕事が続けていけるだろうが…ブラック企業にお勤めなら寝不足や体内時計のズレが精神疾患につながって本当に壊れてしまう。
また、定時がなくゴールが見えないことで、どんどん理由をつけて仕事から逃げるから効率も上がらない。
目標を達成しても次の仕事がバンバン乗っかるだけで勤務時間が短くならず、楽になるような設備も導入されない会社は結局は、社員も仕事を増やされないようにサボる。
一見「8時間労働なんて甘えだ」と思うかもしれないけど…人間なんて毎日効率よく働けるのはせいぜい8時間と本当に忙しい時の残業程度。
経営の世界ではないのだが…野球の世界で似たような理論を導入した監督がいる。
アレックス・ラミレスという横浜DeNAベイスターズの監督さんなのだが…この人は先発投手に
「9回まで完投しても結局次の登板では疲れが残るから、5回まで全力で投げきってくれたほうがいい」
と著書で独自の野球理論を展開した。実際に、独自の理論を駆使して10年間負け続けた横浜を日本シリーズで戦えるチームに育てた。
どうしてもアイデアが浮かばない時は、軽やかに切り替える
実際やってみると効果が出ることばかりを書いてくれている反面、秋本治さんは前人未到の記録を成し遂げた天才。
だから、本を読んだマンガ家からはこんな反論も寄せられている。
『秋本治の仕事術』で気になったのが『「ネームは1日でやるぞ!」と決めてやってしまう』という部分。多分9割の漫画家が「おいおい!」となります(笑) 結局、漫画家(主にギャグ)の苦しみの殆どがネームです。それが出来る超人的集中力。あとやはりこち亀の究極のフォーマットが可能にしてるのかも…。
— 小栗かずまた (@kazumata_oguri) August 26, 2019
小栗かずまた先生の名誉のために言うけど、この人もこの人でテンテンくんという大ヒット作品手がけた天才漫画家だよ!?その人でも本に書いてあることがあまりにも現実離れしてると感じるほどのことがサラッと書いてある。
ブログを書く時にも同じことが当てはまって…ネタを考えたり、書き起こしてみると…使えないかったり、調べてる段階でドツボにはまって骨折り損のくたびれ儲けになることがよくある。
動画をやってみてもネタによっては制作が行き詰まったり、構成に落とし込めないものがあるから…ネタから話に起こしていく創作は全部これが当てはまると思います。
だからこそ、キチッと休みなく作り続けることも難しいし、定時を定めても作れない仕事があるようにも見える。そう見えてしまうぐらいだからできるにしたって難しいのだろう。
ところが、実際に定時と休み、さらに貯金を作ってやりたいことを決めて取り組んでみると…「時間の損切り」ができるようになる!
これは実際にやってみるとわかることだが…定時を決めてしまうと…悩んで1つも進まない時間へのイライラが10倍20倍になる。
どうやっても書けない・進まない・書いたけどおかしいという時に、あまりにもイライラして限界を迎えて
「もういい!今日は休みにする!!」
とブチ切れてやめる。
さらに、2日休んで、行き詰まったネタもボツにして、行き詰まったときの対策を色々考えるようになる。
行き詰まったときの対策は色々あってぼくには思いつかないし向かない正解もあるだろう。でも、ぼくなりには考える。
直近では、週休2日制ルールを定めたから「休みにする」という力技をやった。
しかし、こんなの毎日やってたら話にならないから「ポイント制」というルールを考えた。
ブログという性質上、新作記事を書く以外にもウェブデザインやリライトあるいはツイートまとめを作ったりと色んなことをするから、全ての成果を点数化してポイント制を導入して「新作が書けない日」の対策をした。
マンガ家が「要は面白ければいい」という目標がある。
ブログも、最終的には「要は読まれたらいい」というものがある。
マンガ家は読まれるかどうかは面白さでしか努力できないが、ブログの場合はアクセスをコントロールできる(しなきゃいけない)から読まれるものを書かないといけない部分もある。
当然面白さで読まれるのが理想だが、過去の記事をより役に立つように書き直したり、見やすいサイトに直したりすることも求められるから、そっちの作業にも点数をつけることにした。
ただ、読まれる基準を「炎上」にするのだけは良くない。
炎上すれば確かに読まれるが…お客の質が低すぎてお金にならないし、読者からの信用が得られないからブログを続けても応援してもらえない。
だから、「要は読まれればいい」と言っても、それは役に立ったり、面白かったり、サイトが使いやすいことが大前提。
潰れるような会社には、売上にこだわるあまり、利益をないがしろにしたり、コンプライアンス違反をするところがある。
商売自体はそれなりに上手く言ってるから会社を興して多くの人を雇うことに成功している反面、会計や制度作りにむとんちゃくだったから潰れてしまうのだ。
これは個人も会社も同じ。
注目されるものを一人で数回作ることは得意分野を磨いていけばできる。
でも、続けたり儲けたり人を巻き込んでいくにはルールや仕組みを作っていかないといけない。
秋本治さんの場合は、仕組みを自分のきめたルールに加えて、自分の振る舞いを通じて周りを変えていくことでマンガ家として時間が守れる環境を作っている。
聞けば、秋本治さんの歴代担当編集の間では「先生は時間に厳しいぞ」ということが浸透しているから、みんな時間を守ってくれるのだという。
自分で決めることで他人を巻き込めるのは立場の強さ、天性の人柄もあるだろうが、とにかくそれができるのがすごい。
それぐらい強く線を引く、ルールを決める、目標を定めるというのはとにかく大事。
それは誰にでもできることではないのも確かだ。
でも、エッセンスを入れてみるとガラッと変わることも多い。
働き方にも色々あるから、使えないという人もいるだろう。
しかし、休みの意味や時間への意識を変えるだけでガラッと変わる人も多いから是非とも読んでもらいたい。