マンガ「商人勇者は異世界を牛耳る」が思いの外、経済の本質の詰まった話だった!!

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久々に小説家になろうが原作の作品から紹介。

これねぇ…思ったよりもちゃんと経済を題材としてて面白かった。

紹介する前にこんな事言うのもアレだけど…ぼくは
「これは笑って楽しめるクソマンガだろう…」
という駄作として期待して購入した。

駄作紹介をやる時に使うつもりで購入したところ、意外としっかりと商人として解決策を模索してるところが…面白かった。

駄作にしか見えない1話あらすじ

主人公は独立開業を目指すサラリーマン。

しかし過労で死んでしまい、異世界に転生。
そこで、授かった能力が…まさかの栽培。

勇者系の戦闘系能力を期待してた貴族様や王様はがっかり。

主人公も主人公で異世界から現実に戻れないことをがっかりして、酒に溺れる。

きっかけは酔っ払いの思いつきだった。
思いつきと酒の勢いで残った1本を埋めてみることに…。

すると翌日、こうなった。

味をしめた主人公は…次々と高値で売れそうなものを買ってきて植えてみることに…。

すると…びっくりするような事が起こる。

ぼくは、このシーンで大爆笑しちゃって、「よし、クソマンガにしちゃ上出来だ!!紹介してやろう」なんて意気揚々と1巻を購入。するとこれが思ったより面白かった。

大儲けするには「市場や時代の先を行くこと」だ!これを意外に実践してるから面白い。

このマンガ…意外と商売や経済をしっかり描いているところが面白い。

まず、1話でチートが発覚した栽培スキルだけど…この作品の時間軸だと、栽培スキルの扱いはまだ低い。
こういう描写を使って【主人公上げ、周囲下げ】をするなろう小説が多すぎるため、
「主人公だけが、みんなが気づいていないことに気づくなんてご都合主義だ!」
と思うかもしれない。

でも、同じスキルを持っていてもお酒を埋めてみる人はなかなかいないし、失敗しないと自分のスキルが儲かることに気づかないから…これが逆に面白い。
「いやいやご都合主義でしょ」
って人もいるかも知れないけど…発明ってよくこの「失敗から生まれたもの」があるのよ。

有名なのはとんこつラーメンができる経緯なんだけど…通常のラーメンを作るつもりが、鍋を放置したまま長い時間火にかけてしまった結果、とんこつラーメンの原型が生まれたらしい。
他にも、高価な実験器具を部下の研究員がダメにして「せっかく高い器具だからちょっと実験してみよう」と言ってその会社を救う大発明を生み出した事例もある。(プロジェクトXでそういう話があったので良かったら探してみて)

プロジェクトXつながりで、日本のセブンイレブンが飛躍したきっかけも1つ。
セブンイレブンが細かく在庫管理するきっかけになったのは、仕事ができないやつが「せめてお店の掃除だけでも」と通い詰めているうちに、今のシステムでは細かい在庫管理ができてないことに気づいて「コンビニにはコンビニにあったロジスティクスが必要だ」と気づいて、売れ筋だけを置いて、こまめに発送するシステムが出来上がったそうだ。

この「うっかり世界をかえる発明」ってマンガっぽいけど実話でも意外とある話なんだ。
マンガとしての面白さを際立たせるために、ありえないことのように描いているけど、実はリアルを抑えた描写だから、これがけっこう面白い。

 

さらに、これってよく経済を描いていると思う。
経済ってその国の生産力や商習慣、政治的事情なんかでそれぞれの方向に歪んでる。
経済の歪みを見抜いて大儲けしたジョージ・ソロスは「市場は常に間違っている(私も常に間違っている)」という格言を生み出している。

例えば、日本のギャンブルの事情なんかは世界に比べて変わってる。
世界的に認められているカジノは日本では大ブーイングだが、パチンコ屋は日本中にある。
eスポーツでも、日本は大企業がスポンサーになって運営するスマホゲームのeスポーツは発達しているが、世界的に大きなポーカーは日本ではそんなに発達してない。

これは世界でもそうで…日本にあって世界にないものはたくさんある。
海外進出が下手なだけで、日本のお菓子は世界でもおいしいと評判で観光客からもアメリカのAmazonでも人気がある。
文房具も世界でトップクラスで、アメリカのAmazonで売買されているペンは日系企業がとにかく強い。

こんな風に「市場の歪み(その地域・その時代の弱点)をいち早く見つけて儲けること」を描いているため、ぶっ飛んだスキルを描いているようで、物語の軸で経済をしっかり扱っている。

評価される能力だけではなく、値段の付け方についても基準が違うことをカジュアルに描いている。

現代日本の物価で考えている主人公が、値段をうまくつけられない描写とか…ちゃんと商売している描写だ。
マンガとしてカジュアルに触れる程度だけど…これがあるかないかで商人をキチッとやってるかどうかが変わる。

 

この要素は主人公の商売だけに飽き足らず、物語でもキチッと
「主人公だからこそ、組める人物」
と組んでる。

それがこの怪力娘。

これですね…面白いんですよ。

こいつ、「あまりにも怪力過ぎて武器を壊してしまう」という異世界転生ノベルで考えたら破格の役立たず。
武器を壊してしまうから、無尽蔵に武器が生産できる主人公と組むことになる…というストーリーがまず「なろう特有の弱点もないし、主人公にデレデレなキャラと組むわけじゃない」というところがまず良かった。

次に、商人らしいと思ったのがこいつが抱える2つの問題の解決を考えたところ。
1つは武器の無限生産で、武器を壊してしまうほど怪力という弱点を補う。
もう1つは借金があるけど、それもお金と交渉でどうにかしようとしてる。(2巻での話なのでまだ全部読めてないけど、そもそもこういうやつを仲間にして、商人としてのストーリーを描こうという時点でかなり期待してもいい作品)

ちなみに、この「怪力過ぎて武器を壊す」って逆に、戦争モノとしてはすごいリアリティのある話だから、実はなろう小説でありながらこれを持ち込むのはすごい。

なろうや、なろうのモデルになってるゲームで「武器の耐久力」について考えられてる作品はかなり少ないので、実はけっこうな神設定。

商人役の主人公と相性がよく、逆に他の人では仲間にできないところも面白いところ。

どこまで作者が狙ってやっているかわからないのですが…商人としても戦闘描写としてもほかの小説がやってないところをうまく抑えに行ってる。
リアリティを説教臭くない形で作品の中に持ち込んで、ちゃんと主人公の能力とマッチするように描いている。

どこまで狙ってやってるか聞いてみたい面白さがある作品。
いや、実はマンガ家の情報選びがいいだけで…ってこともあるかもしれないけど、1話を読んだ時に感じたジャンクな感じよりもずっと面白かったです。

カジュアルに経済っぽい作品読みたい人は是非手にとって見てください。

こういう「意外と抑えるところ抑えながらも、設定がぶっ飛んで思いの外評価されない作品」って開拓できると幸せですね。
また見つけたい。

◆関連記事:ちゃんと経済を描いているなろう作品

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これは、2巻を読むとかなり経済小説してて面白かった。使い魔を使って労働法違反を査察調査するシーンはぼくはかなり好き。原作の森田季節さんはゲテモノな作風で見下されがちだが、本人は京都大学出てるガチモンの賢者なので…その賢さが節々に出ることがあってぼくはすごく評価してます。

 

 

 

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