「何言ってんだお前」と言いたくなるつぶやきを見つけた。
だいたい「今の日本映画はつまらない」とか「神目線」言う人間は、例えば予算のない現場で制作のスタッフがしょぼい弁当をリカバーするために必死で味噌汁作ってキャストやスタッフを盛り上げようする矜持すら知らない。俺はそんなやつらは一切信じない。勝手にほざいてろ。
— 福田裕彦 ほぼ8歳612ヶ月ですが? (@YasuhikoFK) 2016年4月9日
「予算のない現場でスタッフがしょぼい弁当をリカバーするために味噌汁を作ってスタッフやキャストを盛り上げようとする」
と映画が面白くなるんですかね〜?
懐古主義者ではないが、今の作品が失った部分ぐらい認めれば?
誤解をされぬために言うが、過去を美化したいのではなく、「時代が進んで得たものもあるけど、失われたものもある」というスタンスだ。
僕が生まれる前に放送された作品をいくつか見た。
中でも、探偵物語のベタベタなお話がいま見ても面白く、衝撃を受けたので、こんな話を書いてみたい。
探偵物語だけじゃないんだけど…80年代・90年代の作品見てて思うことを色々書いてみようかなぁ…と。
1、映像や仕掛け、動きがいちいち派手だった。
顕著なのは車を中心とした乗り物に関すること。
やりたい放題に車をぶつけたり、爆発させたり、追いかけっこの時にはすごいドリフトを決めたり…映像がとにかく派手。(ヘタしたら、アクションのためにヘリとか出てきちゃうし…)
ついでに言うと、80年代の作品ってスーツに中折れ帽のおじさんが割といっぱい出てくる。それが(探偵モノとしてはツッコミどころになるほどに)シュールで怪しい格好だけど、派手でかっこいい。
予算自体があっても、スケジュールや技術、リスクヘッジの関係で「デジタルに逃げてしまう」今と違って、乗り物やアクション でドッカンバッコンやってたのがあの時代だから…そりゃ、面白いよね。
「お金があった」といえばそれに尽きるのかもしれないので、いっそのこと
「お金があった時代の方が面白いのはしょーがねーだろうが!」
「何倍予算違うと思ってんだよ。」
とか言ってくれた方がまだ救いがあったね…。
予算が全てではないけど、昔の映画・ドラマがやってたバカみたいなことは今やれば相当お金がかかるであろうことがいっぱいあるわけで…。
それを、
「貧乏な現場でも、盛り上げてがんばってるんだよ!頭ごなしにモノを言うな」
とか、言っちゃうセンスがもう…うん。
僕みたいなネットの隅っこでブログを更新しているだけでも頭ごなしな人なんかいくらでも湧いてくる。
批判はなんか作って発表する人にはつきもの。そんなこともわかんない奴が作品の面白い/つまらない・正しい/間違ってる以外で突っぱねようという態度がもうわからん。
そもそも、今まで何してたんだろう?このクリエイター。
2,役者の体の張り方がイケメンでも容赦ない・表現も含めた周囲の制約が少ない
探偵物語を見てて斬新だったのは、若いジャニーズぐらいなら霞んで見える超絶イケメンの松田優作がズッコケもやるし、女の子大喜びの脱いだシーンをいっぱいやる。
逆に男が大興奮な脱ぎシーンもちゃんとある。
毎回毎回じゃないし、シーンの数として多いわけじゃないんだけど、ちゃんとある。
その辺のセックスとかキスとかの表現や触れ方がもっとフランクだった。
あんまり意味もなく、娯楽感覚・おもしろ感覚でやることが許されてた時期はあった。
有名どころで言うと、コマンドーの1シーンで意味もなく、隣の部屋でしけこんでるヤツラの部屋にメイトリックスと、元グリーンベレーのおっさんが喧嘩しながら流れこむ。
こんなこと日米問わず、演出の1つとして認められたのよね…。(日本で言うと「マルサの女」などで、ラブホテルの部屋を開けまわるシーンがあります)
それを誰に配慮したか知らないけど…最近の作品からは抜け落ちてる。
だから、恋愛の描写とかがもっと童貞臭くなってる。意図的に性的ニュアンスを含む愛情表現を避けるとピュアに走るしかないし、ピュアに走るにしてもセンスが無いと…うん。
いや、女性が乳首を出す・出さないは単純に「表現規制だ」と言い切れない部分はあるよ。
でも、松田優作がかっこいい役も、脱ぐ役も、ズッコケも(それどころか、彼の場合はアクションも)全部やってるのを見て
「今のイケメンは甘やかされてるなぁ〜。イケメンだったり、事務所が強いことを理由にやらないけど、昔のイケメンの体当たり加減を知ってたらそりゃ昔のテレビを比較対象にしてる人はつまんないだろうなぁ〜」
と。
これ、松田優作なんて特殊な事例を出したから
「イチローや長嶋みたいな野球選手がしょっちゅう出てくるわけねーだろ」
みたいなツッコミを受けそうだけど…お笑いとかで考えなおしてみ?
事務所の強弱、芸人感の縦関係、表現上の制約で、下品なことも思い切ったことも言えないし、やるなんてもってのほか!!
現場の味噌汁や人情自慢より予算と制約外す努力したら?
3、今の邦画・ドラマのような押し付けがましさがない
昔の作品の多くが、ベタベタな…時代劇とかアンパンマンみたいなテンプレートみたいなストーリーの分だけ、押し付けがましさがないから見やすい。
もちろん、「押し付けがましくないような中身のある話」もあるにはある。
しかし、その多くは一部作家性が強い洋画・深夜アニメ・ドラマでもよっぽどのテコ入れの回ぐらいだ。
むしろ、今のものは「みんなが見られるものじゃないといけない」邦画やドラマはくどいぐらいわかりやすく、変わったテーマについて議論しようとする。
ここが変わってます、ここがおかしいですとしつこく繰り返す。
少し前に話題になった半沢直樹で言うと、「伊勢志摩ホテル」に関するシーンがそれに当たる。
なぜか、世襲の経営者が悪だと決めつけた会話がなされる。
なぜ悪なのかも説明しないまま、悪だ悪だと言う俗論を銀行員なんて再興に学歴のいい人達が連呼している不思議空間がドラマの中にできあがってる。
本来、…世襲の経営者ダメなんじゃなくて、能力で選ばない姿勢・世襲するにしても後進に技術が伝承されないことが問題なのに、そういう話が一切ないまま「思考停止した考え」が押し付けられる。
議論なんて台頭なものではなく、思い込みとか刷り込みとか押し付けに近いフレーズを繰り返す作品が増えた。
また、それがテーマであることを刷り込まないと理解されないし、理解されないとダメだと思ってるクソみたいなクリエイターが増えた。
「探偵物語」という作品が斬新に見え、名前を出したのは、「決めつける・思いつめるキャラクター」とその対局にいる主人公が必ず出てくるというところにもある。
また、決めつける・思い込む人はいるが、それはキャラクターや事実に対してであって、「オピニオンや価値観に対するおしつけ」は避けられている。
だから、探偵物語を「あいつバカだな〜」と思うことはあっても、「押し付けがましくてうるせー」とは思わなかった。
信じるか信じないかはアナタ次第ですが、勝手にほざかしていただきました。
「テレビはなぜつまらなくなったか?」だと!?
それは予算的にも表現的にもジリ貧 になって派手なことができなくなった結果、制作陣の内輪ネタ・価値観・プロ意識を強く押し付ける作品が増えたからでしょ?