「球詠」というマンガは、野球経験者ほど目新しく見える野球マンガである!!

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今日紹介するマンガはこの「球詠」。

野球ファンには違和感のあるマンガだと思う。

…というのも、
ミニスカートぐらいのスカート丈でバッテリー・打者・審判と役割分担して野球をしたり…

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半袖に、ホットパンツみたいなユニフォーム*1で打席に立ったり

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(本物のソフトボールや女子野球のようなゴツい選手がいなくて、)全員華奢な女の子達が野球をするマンガだから、すご~く違和感があると思う。

「 野球」というくくりにこだわりのない萌えキャラに慣れたオタクたちは

いかにもな二次元美少女が野球してるだけじゃないか!作品のどこが斬新なんだ?

「野球の本来の形なんかどうでもいい。女の子の太ももが堪能できるいいマンガじゃないか!!」

と思うかもしれない。

でも野球マンガってモノを見慣れてるとだ!!
野球マンガってジャンルは基本的に登場人物が男で、しかも極端なギャグにするか、作者の生々しいほどの実体験を語るかで、普通はこんな野球マンガ存在しないんだ!!

そんなセオリーをぶち破ってだ!!

野球こそしてるけど、こんだけ雑で・不自然に…そして、そのことがかえって目新しく見えてしまう…不思議な魅力を持ったマンガに仕上げたことが、僕はすごいと思った。

 

今まで、野球マンガが萌え萌えにならなかった理由 

エルフェンリートの作者である岡本倫さんが、こんなこと言ってた。

確かに、著名な野球マンガ家は野球経験がある人が多い。
しかも、その経験に基づいたリアリティを追求した緻密な作品が多い。

例えば、「グラゼニ」の原作者として有名なコージィ城倉さんは高校まで野球をしててしかもポジションは捕手だったとか。
だから、彼の作品はバッテリー周りの話が多い。特に「おれはキャプテン」「ロクダイ」では、自分の中学・高校時代を投影したであろう「控えの捕手」が主人公。

「ダイヤのエース」の作者である寺嶋裕二さんも、高校時代には香川県でベスト4に入ったこともある強豪校にいた。

その経験から、強豪校の空気感を描いた野球マンガを描いている。

しかも、コージィ城倉さんと違って、ポジションが外野・一塁手・投手と色々やったことから、野手の話も多く描いている。

最後はおおきく振りかぶって。これは女流作家なんだけど…作者はソフトボール経験者。
しかも、大学ではスポーツ心理学を専攻している本格派なので、「心理描写重視の野球マンガ」を描くだけの経験も知識もある。

野球自体の競技人口が多いことは「読者も野球に対してシビアである」と同時に、「野球マンガを描いている人も青春を野球に費やしたり、野球が好きでたまらないような人が描く」ため、ジャンルとしてレベルが高い。(講談社系の作品は特に)

だから、安易に女の子だらけでかわいさを追求する路線を取れない。

また、野球マンガを、野球に詳しくない人が描く場合

・(超人だらけの)ギャグ漫画/バトルマンガっぽくする
・高校球児と同じ学年のファン的な子とのラブコメテイストにする

のどっちかになることが多い。
集英社は超人バトルマンガを好み、小学館…特にサンデーはラブコメ路線を好む。

変わり種な野球マンガでも、やはり女の子を出しにくい。
むしろ、ギャグやバトルにすると男女逆転させるのが難しい構成になるし、女の子だらけの野球部の男子マネージャーって…時点で、キャラクターが限られてくる。

だから、女子野球のマンガ自体が少ないし、あったとしてもそこまで萌え萌えにはならない。

そのため、野球描写が雑になっても萌えを追求していく本作のような路線は、野球マンガとしては珍しい

特に萌えを追求していくスタイルになると、ユニフォームや体格に「嘘」が出てしまうため、そこで好き嫌いが別れる。
好きにも嫌いにもならなくても、知っている野球マンガとは絵面が変わってしまうから違和感を覚えることだろう。

その違和感が僕にはすごく面白かった。

女の子同士で筋肉や体の話をしていると…ちょっといい(*´ω`*)

このマンガは絵面には嘘がいっぱいあるけど、いたってまじめに野球をやっている。

しかし、真面目にやってるはずなのに、それが女の子同士であるということが

「女子がこんな会話するの!?」
「男同士のやり取りとは全然違う意味を帯びてきて面白い!!」
「男でこれ言ったら指導者に殴られるやつだ!女の子が言うと、女友達間の陰湿ないじめっぽく見えるから不思議!!」

というシーンになっているため、読んでいて新鮮な気持ちになった。

例を2つほど出してみよう。

まず、ピッチャーの子のマメをみて持ち玉を見抜くこのシーン。

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男同士だと、知的な先輩とか野球オタクとのありふれたやり取りなんだけど、それを女の子がやると「フラグが立った」「この後、どっちかがメロメロになって付け回すやつだ!!」と、勝手に興奮(期待)しながら読めるシーンに見えてしまう。

もう1つは逆に「こんなこと男の野球部員が言ったら殴り合いになるけど…」というこのシーン。

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いや、落ち玉を逸らしておいて投手のせいにする捕手とか万死に値するだろ!!
野球やる資格もねーよ!!!

男同士なら殴り合いが始まるっていうか、投手やるようなタイプの性格の人ならマウンド降りて帰るとか、試合に勝ちたいほかの野手が突っかかってくるとか…そうならないとおかしいんだよね…。

でも、これが女の子同士であるせいで、このやり取りのせいで投手一人がイップスになるとかそういう感じのふんわりした描写になってて…しかも、それがすんなりと受け入れられる。

女の子だらけにしたことで、

「野球してる人間同士のやり取りはこういうものだ」

「何気ないシーンのはずなのに、女の子だけにした途端に愛らしくも見えるし、突っ込みどころにも見えるのはなぜだろう」

と、読み手の頭の中から野球マンガのイメージが崩壊していく。

その感覚を、野球マンガを読み慣れた人にこそ僕は味わって欲しいです。

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